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2010-01-01

決意表明2010

武田家滅亡文庫版カバー1

あけましておめでとうございます。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
依然としてトンネルの先が見出せない出版不況の2009年でしたが、私個人としては、三冊の新刊と一冊の文庫改訂版を出すことができました。それぞれの実売数は、けっして満足のいくものではありませんでしたが、読者並びに関係者の皆様のお陰で、2010年も何とか作家活動が続けられそうです。
 あらためて御礼申し上げます。
 2009年、私にも大きな心境の変化がありました。これまでは、気楽に「自分が読みたいものを書く」というスタンスで作品を書いてきましたが、これからは自分や読者のためだけではなく、歴史小説を後代に伝えていくために、歴史小説の存在意義を意識したロングライフな作品を、世に送り出していかねばならないと思うようになりました。
というのも、これからの歴史小説を取り巻く状況は、たいへん厳しいものがあると思われるからです。武将ブームとは裏腹に、日本文化を代表する小説分野の一つである歴史小説は衰退の一途をたどっており、このままでは、過去の大家の作品だけが残るという最悪の事態に陥りかねないと思っています。
 ミステリー、ホラー等、現代を舞台にした小説分野を好む読者の多くは、常に新しいものを求め続ける傾向がありますが、しかし、こと歴史小説に限って言えば、読者の多くが過去の大家の作品を読み続け、新たな作家に目を向けようとしません。これは、時代小説分野でさえ起こっていない不思議な現象です。
むろん、われわれ現在進行形作家の送り出す作品が、過去の大家の作品群に、到底、及ばないというならまだしも、新しい作家の作品を読まずして、過去の大家の作品ばかりを読み続ける読者が、大半を占めるのが現実です。
 歴史小説読者の保守性がそうさせているのかも知れませんが、時代に劣化してしまった作品を読んだ若い読者が、その遅々として進まぬ展開や、大げさな文章表現、はたまた古い定説や史料を元にした考証に、「歴史小説なんてつまらないや」と言って、あたらこの分野の愛読者となる芽を摘んでしまうことが残念でなりません。
 それゆえ、われわれ現役歴史小説家は、この傾向に歯止めを掛けねばなりません。現代的価値観に合致していることはもちろん、他分野の作品に劣らぬ質の高い作品を書き上げ、読者の厳しい評価の目に晒していかねばならないのです。その戦いを勝ち抜いてこそ、小説の王者である歴史小説の伝統を継承していくことができるでしょう。
2010年、世の中は依然として混迷を極めることになるでしょう。そうした時代にあって、歴史小説の価値はいっそう重要なものとなるはずです。他分野の小説を圧倒するほどの面白さを提供することはもちろん、他分野の小説にできないこと、すなわち、そこから「過去に生きた人々から生き様を学ぶ」ことを意識した”時代に劣化しない作品”を送り出し続けることが、歴史小説家の使命であると信じています。

2010年正月朔日

伊東潤
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