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2010-01-14

読みやすい文章とは何か

先日、携帯小説の人気作家のインタビューを見ました。その中で彼女は「読みやすさを出すため、できるだけひらがなを多くしています」と言っていました。
私は頭を抱えました。
今の若者にとっての読みやすさって、そんなところにあるのですか。
 私は、人から「どんな小説を書いているのですか」と問われると、「一行あたり最も漢字の多い小説です」と答えます。すると必ず相手は不思議そうな顔をします。そこで私は付け加えます。「いくら漢字が多くても、それでもページをめくる手が止まらない小説こそ、私の目指すべきものなのです」と答えると、相手はようやく納得します。
 読みやすさはひらがなの多さにあるのではなく、別のところにあります。安易にひらがなを多くして、万人にこびへつらおうとする作家は成長しません。
 それでは読みやすさとはどこにあるのでしょうか。
 それは文体にあります。さらに詳しく言えば、文章のリズム感にあります。音楽的に言えば、絶対音感と言っていいかも知れません。
 同じロックンロールをやっていても、なぜストーンズだけが皆に愛されるのかわかりますか。それはギターのリフ作りのうまさとベースのライン取り(裏メロ)が絶妙のコンビネーションを発揮しているからです。
「ここ」という時に、絶妙の言葉を配し、句読点を打つ。
 これができれば、いくら漢字が多くても読みやすさは損なわれません。
 ということで、私は一文節に三十分かけることもあります。それでも、その文節に気づいてくれる読者はいません。まさにビル・ワイマンのベースラインのようなものですが(笑)、それが幾重にも連なってボディブローのように効いてくると、読者もグルーブ感が出てきて、一気に読み進めてくれるのです。この読者にグルーブ感を生み出せる文体こそが、読みやすさなのです。
 それではどうすれば、こうした絶対音感を身につけられるのでしょうか。これは、森鴎外、夏目漱石、芥川龍之介、そして司馬遼太郎をはじめとした絶対音感を持つ作家の作品を読み続ける以外にありません。それも、できれば若いうちに―。
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伊東潤

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