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2011-12-14

今年の総括【第三回】『北天蒼星 上杉三郎景虎血戦録』

景虎カバー帯なし

上杉三郎景虎――。
その名を思い出すと、ある種の感慨を抱かずにはいられません。
そこかしこで悲劇が繰り広げられた戦国時代においても、三郎ほどの悲運を背負った武将がほかにいるでしょうか。
彼はなぜ、あれほどの度重なる悲運に見舞われねばならなかったのか。
それを思うと、万感の思いがこみ上げてきます。
氏康公の七男として生まれ、僧侶としての人生を歩ませられつつ、いくつかの偶然から念願の武士となったのも束の間、兄たちと同等の所領を取り上げられて越後に人質として赴かねばならなかった三郎――。
そこには悲しい別れもありました。
すべてを振り捨て北の大地に立った三郎は、謙信公の慈愛に溢れた庇護の下、新たな人生を踏み出そうとしますが、そこに景勝と与六の陰謀が――。
史実を追うだけでも、これだけ波乱に富んだ生涯を歩んだ武将は、なかなかいません。
ただ「史実を追う」と言っても小説ですから、この作品には、数々の「歴史解釈」がちりばめられています。
読者に考えていただきたいのは、史実を追っているように思えながらも、なぜ面白いのかという点です。
これは工房の秘密にもなるのですが、史実をトレースしているように見せかけつつも、実はバックグウンドで、歴史解釈力とストーリー・テリング力を駆使しているわけです。
史実は氷山の一角で、水面に浮かぶ史実の下に隠れた巨大なものを作家の解釈力で描いてみせるのが、歴史小説の醍醐味なのです。
たとえ滅びても、”義”に生き、武将として鮮烈な生きざまを後世に示した三郎の生涯を、心ゆくまでお楽しみ下さい。
初期伊東潤作品群の掉尾を飾る作『北天蒼星』を、ぜひ、ご一読いただきたいと思っております。
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