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2013-06-15

歴史時代作家クラブ受賞式ス用ピーチ

昨日は、歴史時代作家クラブの授賞式に行ってきました。
既報の通り、作品賞に『義烈千秋 天狗党西へ』が選ばれました。
昨日はかなり時間が押していて、スピーチはお礼の一言しかできなかったので、ここに予定していた全文を掲載させていただきます。

この度は、栄誉ある賞をいただきましてありがとうございます。
歴史時代作家クラブは設立前より注目しておりましたが、ここに来て、急速に知名度も上がり、この賞も、わずか二年で確固たるステータスを築いたと思われます。
しかも会員でない私を、平等に評価いただき、この上ない喜びです。
さて、歴史時代小説と一括りにされますが、ここにきて百花繚乱のごとく範囲も広がり、また他分野から転出するプロ作家も多くなり、その面白さのレベルも、昭和の頃とは比較にならないほど上がってきています。しかし、他分野の小説のレベルも着実に上がっており、歴史時代小説も新たな魅力を常に発信し続けていかねばなりません。そうした中、われわれはいかなる作品を世に問うていくか、これはたいへん難しい問題でもあります。
私の場合、歴史解釈エンジンとストーリーテリング・エンジンと呼んでいるのですが、その両方を回して作品を紡いでいます。
つまり「歴史の新解釈と物語性が高度なレベルで融合した作品」を常に目指しています。
その理想が最も成功した作品こそ、今回、賞をいただいた『義烈千秋』です。
この作品では、どちらかと言うと、歴史解釈エンジンが主で、ストーリーテリング・エンジンが従という形になっていますが、まずは「史実に忠実に」ということを旗印に掲げ、その縛りの中で、いかに物語性を強く打ち出すかに腐心しました。
「史実に忠実に」と言うと、とかく「つまらない」と思われがちですが、決してそんなことはなく、作家の腕次第で、いかようにも面白くなります。
『義烈千秋』の中に出てくる野村丑之助、横田藤三郎、不動院全海らの死の場面は、少ない一次史料を調べ、さらに綿密な現地踏査の果てに、行きついた推定史実です。
彼らのような草莽の志士の最期は、一次史料ではよく分かりません。しかし周囲の状況、全体の動き、現地の地形を鑑みれば、推定史実までは引き出せます。
例えば、聞き書きでわずかに残された全海の最期は、なぜか大将の陣羽織を着て、単独で諏訪藩の銃火の中に突入します。彼は何をしようとしていたのか。そこから紐を手繰っていくと、推定史実が導き出されるわけです。
こうした執念と、史実から逸脱しない想像力こそが歴史小説には必要です。
この部分を適当にやってしまうと、結局、魂が入らず、腑抜けた作品になってしまうのです。
また些細な史実でも、一つ曲げると、そこから大きな亀裂が生じ、話のつじつまが合わなくなってしまうこともあります。
そうした点に気を付けつつ、これからも魂のこもった作品を書いていくつもりです。
そして歴史小説の面白さを次の世代に伝えていくことが、自分の使命だと思っています。特に若い世代に、小説を通じて楽しく歴史を学んでほしい。歴史は教訓の宝庫だからです。
本日は、ありがとうございました。
プロフィール

伊東潤

Author:伊東潤
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『巨鯨の海』
『王になろうとした男』
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