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2013-06-07

小説家志望者への提言

小説家志望者の数が、増加の一途をたどっていると聞きます。
それ自体は決して悪いことではないのですが、機が熟していないにもかかわらず、デビューを急ぐ方が増えている気がします。
先行者たちに伍していけるほどの力量が不足しているにもかかわらず、デビューすることは、本人にとっても出版業界にとっても不幸です。
若くしてデビューしても、何冊か売れなかったら、それでおしまいです。復活のチャンスは、ほとんど与えてもらえません。
なぜこんなことを言うのかというと、自分も危なかったからです。
文章修業も未熟なまま、2007年に『武田家滅亡』でデビューを果たした私ですが、2010年頃までの作品は、文章がへたくそで読めたものではありません。
今、その頃に出した作品の文庫化が相次いでいますが、そのためのリライト作業はたいへんです(笑)。
私が生き残れたのは、本格歴史小説家が少なかったからという一点に尽きます。
私のことはともかく、これからデビューしようとしている方は、それなりの小説教室に通い、文章技術が標準以上に達するのを待ってから、大きな新人賞を受賞して(これが大事)、満を持してのデビューすることをお勧めします。
新人賞受賞作家には、その賞を主催する版元の強力なバックアップが得られるからです。
版元の強力なバックアップがあれば、デビュー作からすぐにベストセラー作家の仲間入りを果たすことも可能ですが、それがなければ、私のように最底辺から這い上がっていかねばなりません。
これは実に大変ですし、時間もかかります。どんなに腕が上がってきていても、その途次に売れなくなれば、そこでアウトです。

小説家がよい作品を書き続けられるのは、せいぜい二十年ほどです。これは、なぜか作品数ではなく年数なのです。
それを考えれば、自分の人生のどの部分を切り取るか、じっくり考えることも重要です。
たとえデビューできたとしても、力量が不足していれば、二十年間、標準以上の作品を書き続けるのは到底、無理です。
破天荒な作風で時代の断面を切り取るような作品を書けるなら、若くしてデビューするのも手ではあります。しかしそうした作風を二十年、続けることができるのでしょうか。そうした方は、別に主業や資格を持っておくべきでしょう。
一方、長く書き続けたいのであれば、じっくりと社会経験を積み、四十代からの二十年間に絞るのがいいでしょう。
時代小説ですと、五十代からの二十年間でもいいかもしれません(六十代では遅いですが)。
そのためには急がず焦らず、多くの書物に接し、書くことよりも読むことを優先することが大事な時期もあります。
私は四十二歳になるまで、小説は読むものとしか考えていませんでした。その点、よき読者として多くの書物に接したことが、今となっては大きな糧となっています。
まず、そうした乱読経験のない方は、今の生活をなげうって小説家になっても、三作と続けられないはずです。
専業作家になってしまったら、その後の人生のデザインをどうするか、また本を出せなくなった時、何をして食べていくか、そういう最悪の事態まで考えていなければなりません。
おそらく作家志望者の方々には、栄光の作家生活しか念頭にないはずです。
そんなことは夢にすぎません。
9割近い作家が、デビュー五年後には新刊を出せない状況になっています。
希望を失った状態で生き続けるのは、誰にとっても辛いことです。それなら夢を先送りするのも手ではないでしょうか。
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プロフィール

伊東潤

Author:伊東潤
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『巨鯨の海』
『王になろうとした男』
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『池田屋乱刃』
『死んでたまるか』
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