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2011-10-02

人生は一回きり

多くの編集者から聞いたのですが、昨今の公募型新人賞の傾向として、平均年齢がひじょうに高くなっているといいます。それだけではなく、これまでエッセイ色の強かった中高年の作品傾向が、とみに物語性が強くなってきたというのです。
小説教室の受講生も平均年齢がとみに高くなりつつ、しかも、ほぼ全員がプロを目指しているそうです。
逆に若者の公募新人賞への応募数や小説教室受講数は、減少の一途をたどっています。
つまり不景気な現業に嫌気が差し、作家業へと本気で舵を切り始めた中高年と、食べていくために精一杯で小説どころではない若者、という図式がはっきりとしてきたのでしょうね。
また、今回の乱歩賞が女性二人のダブル受賞となったように、かつては、それほどでもなかった女性のプロ作家指向が、たいへん強くなっている気がします。
これは、マクロ経済の影響が男性だけでなく女性にも影響し始めている証左でしょう。つまり倒産、リストラ、就職難というものが、本人ないしは夫を直撃し、生活のために小説家になることを、女性も本気で考え始めたということです。
先日、乱歩賞のパーティで、デビューしたての女性作家の方と話をする機会があったのですが、その方は時代小説を書いていて、あまりの競争の激しさから、歴史小説分野への進出を考えているとのでした。
たとえデビューしたてであっても、女性も「書きたいものを書く」時代ではなく、「生き残るために書く」時代なのです。

かくゆう私も「Point of no return」を超えてしまった一人ですが、何度も話しているように、その原因はリーマンショックでした。
実は、本業のコンサルタント業よりは、文筆業の方が「まし」というのが、専業を決意した二年ほど前の本音でした。
その考えは、今でも変わっていません。
どれだけ実力があっても、どれだけ実績を上げても、景気の波によって予算カットされるフリーランス・コンサルタントよりも、仕事が確実に入ってくる文筆業の方が、はるかに安定していることに気づいたのです。
しかも作家は、開業資金が不要で、「一発当たれば」という宝くじを買っているも同じです。この宝くじには、「小当たり」も多数あるので、ひじょうに効率がいいのです。
それゆえ作家の方々の多くが仰せである、「専業はやめた方がいい」という意見には同意しかねます。
それは「実業の世界を知らないから言っているのかな」という気もします。
正直な話、公務員でない限り、上場企業の管理職であっても、専業作家と比較したリスクはどっちもどっちなのではないでしょうか。
もちろん「景気が回復すれば、リストラや倒産のリスクは減るので、状況は違ってくる」かもしれません。しかし景気が回復すれば、本も全体的に売れるし、ライター仕事も増えるので、どっちもどっちでしょう。
少なくとも、フリーランスで別の仕事をしている方は、本業を捨て、専業で勝負をかけるのもありかなという気がします。
その方が不退転の覚悟もできるし、その覚悟で精進しない限り、腕は上がりません(これは本当です)。
正社員の方はケース・バイ・ケースですね。
サラリーマンほどおいしい商売がないのは、動かし難い事実ですから、一概には言いきれませんが、一つの尺度として、もう上がり目がなくなったら(笑)、思い切るのも手ではないかと思います。
人間関係などで嫌な思いしながら、自分の最も充実した日々を社畜として過ごすくらいなら、先行きの不安はあっても、よほど作家業の方が楽しいと思います。
人生は一回きりです。
持って生まれた才能や個性を生かすも殺すも、決断次第です。
ただし、定年間近になってからでは、勝負が遅すぎます。
遅くとも専業の決断は、四十代後半までに下さないと、成功は覚束ません。
なぜかと言うと、年を取ると根気がなくなり、集中して何時間も執筆するとか、徹底的に調査するといった体力勝負ができなくなるからです。
ところが、数年間にわたる地獄の体力勝負を経ていれば、後期高齢者になっても心配ありません。
なぜかと言うと、執筆という仕事に習熟しているだけでなく、自分の仕事方法のパターンを築き上げているからです。

こんなことを言っていると、「多くの人が参入してきても、お前は構わないのか」という疑問をお持ちの方がいるかもしれません。
いまだ成功したとは言えない私が、こんなことを言うのもおこがましいのですが、それについては、「じゃ、勝負しようぜ」ということしかないですね(笑)。

最後だけでもかわいく、アンニョーン(^^)/
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